はじめまして、ご覧いただきありがとうございます。祈(いのり/inori)と申します。
自動ドアに認識されないことが最近の悩みです。
当ブログでは本の考察(もとい妄言)を気ままに書かせていただきます。
この作品に登場する、天吾のガールフレンド(=安田恭子)は、実は教団側のスパイなのではないか…というのが、本記事の結論です。
【この記事で言いたいこと】
天吾のガールフレンド(=安田恭子)は、実は教団側のスパイなのではないか
根拠は以下3点です。
【根拠】
- 牛河が天吾の内情を知りすぎているから ←今回の内容
- タマルが語る”菜食主義の猫とネズミの話”の真意が表れていると考えられるから ←次回の記事の内容
- 『1Q84』の登場人物は名前に法則性があり、その法則に当てはめると牛河と安田恭子がリンクするから ←3回目の記事の内容
↑根拠1だけで2,000文字を超えてしまったので、3回に分けます…
では頑張って書いてみますので、どうかお付き合いください!
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(以下、『1Q84』のページ数に関するすべての記載は、新潮文庫単行本に拠ります。)
ここから、各根拠の詳細説明に入ります。
まず”1.牛河が天吾の内情を知りすぎているから”という点。
BOOK2前編で突如天吾の勤める予備校にやってきて、怪しげな話を持ちかける牛河さん。村上春樹作品の中でも、かなり異質な存在と捉えてよいでしょう。←読者の中には、結構ファンも多いようですが…笑
そんな牛河さんですが、天吾のことを知り過ぎていると思いませんか?
天吾が長編小説を書いていることを知っているのはもちろん、ふかえりと繋がっていることや、安田恭子が天吾の前から姿を消したことさえ知っているような発言もしていました(そして実際BOOK3前編で、”ご主人から電話がかかってきて消えた”ことまで知っていることが明かされます)。
この”知り過ぎている不自然さ”こそ、わたしが本考察に至ったきっかけです。
牛河が天吾のことをここまで詳しく知る方法として、以下が考えられます。
A)なんらかの超自然的な力で、知ることができた
B)牛河が言う「リサーチャー」が、異常なレベルで「熱心で有能」だから、知ることができた
C)天吾の内情を知る何者かとつながっていたから、知ることができた
このうち、A)の場合にはわれわれ読者はお手上げなので、考慮しません。
また、B)の場合は”そういうものだ”と言われてしまえば納得せざるを得ないため、可能性としては消せませんが、これも考慮しないこととします。
ということで、牛河が天吾のことを詳しく知る方法として掘り下げるべきは、”C)天吾の内情を知る何者かとつながっていたから、知ることができた”です。
では、この”天吾の内情を知る何者か”とは誰でしょう?
わたしはこの人物が、天吾のガールフレンド安田恭子ではないかと考えています。
BOOK1後編 第20章「気の毒なギリヤーク人」(p.226-)以降の天吾に関わる出来事を整理します。
(第20章)ふかえりが天吾の家に来る→帰る
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(第22章)安田恭子が家に来る→夜に小松から電話で、ふかえりの行方不明を知らされる
↓
(第24章)ふかえりからテープが届く→小松から再度の電話→金曜日に安田恭子が再度来る
↓
(BOOK2前編 第2章)予備校に牛河が来る
↓
(BOOK2前編 第6章)安田恭子が来なくなる→その夜、電話で安田の夫から安田恭子が「失われてしまった」ことを告げられる
このように見ていくと、重要な出来事の前後には必ず(およそ本筋とは関係なさそうな)安田恭子が現れていること、そして安田恭子は牛河と入れ違うように、天吾の前から消えているということがわかります。
ここから、安田恭子は教団(もしくは牛河個人)とグルであり、役目を終えたからフェードアウトした(もしくは物理的に消された)のではないかという考察妄言では?が浮かび上がってきます。
上記以外にも、疑わしい描写は何点か存在します。
(BOOK1後編 p.349 l.5-7)それでもやはり、天吾がほかの何かに気をとられていることを、彼女は見抜いたようだった。
「ここのところ、ウィスキーがかなり減っているみたいだけど」と彼女は言った。
(BOOK1後編 p.355 l.10-p.357 l.8)そのかわり今書いている小説の話をして」(中略)
「たとえば、ここではない世界には月が二個あるんだ。だから違いがわかる」
月が空に二個浮かんでいる世界という設定は『空気さなぎ』から運び入れたものだ。(中略)彼女は言った。「つまり夜になって空を見上げて、そこに月が二個浮かんでいたら、『ああ、ここはここではない世界だな』ってわかるわけね?」
(BOOK2前編 p.60 l.2-5)川奈さんが今現在、長編小説を書いておられることは、まわりの何人かはおそらくご存じでしょう。何によらず話というのはもれるもんです」
天吾が長編小説を書いていることを小松は知っている。彼の年上のガールフレンドも知っている。ほかに誰かいただろうか?たぶんほかにはいないはずだ。
いかがでしょう?
協力関係にあったかはさておき、天吾が安田恭子に明かした内容が教団側にも筒抜けであったことは明らかです。
次回以降の記事では、ここから一歩踏み込み、安田恭子が教団側と協力関係にあった(≒単に盗聴などをされていたわけではない)だろうということを述べていきたいと思います。
ここまでお読みいただいたみなさま、ありがとうございました!
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今日の蛇足)『1Q84』の登場人物の中ではわたしはタマルが好きです。
無骨な感じなのに、プルーストのくだりで「次回の荷物にマドレーヌを一箱入れておこう」(BOOK3後編 p.52)など、ステキな切り返しをしてくれるところにキュンとします。
▼次回の記事です。