村上春樹ファンを親族より多く集めて結婚式を挙げた話
お久しぶりです、祈(いのり/inori)です。
ほぼ1年ぶりの更新でございます。
私ごとですが、先日結婚式を挙げまして。
とても楽しい式になりましたので、記念にレポさせていただきたいと思います!
[目次]
◆ゲストについて
◆お役目について
◆会場内アイテムについて
◆主催側スピーチについて

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◆ゲストについて
わたしは村上春樹作品が好きなかたたち(以降「村上主義者」)の読書会であるFutako Book Clubに所属させていただいておりまして、今回はそこから特に熱量が高い12名の狂信者のみなさまを招待させていただきました。
わたし側の親族は10名だったので、親族より主義者の方が多いんですね笑
おかげで会場はなかなか異様な空気となりました。
まず、招待状にそんなことは一言も書いていないのに全員が春樹先生の本を持参。
あとあと聞いたところによると、持参する本がかぶらないように事前に打ち合わせてくださっていたとのこと。既に1冊お持ちなのにわざわざ新品をご用意くださったかたもいたそうです。誰がそこまでやれと(ありがとう)。
次にファッション。さすがに白いシルクのワンピースを着て「ミシシッピ」のスペルに想いを巡らせるようなかたはいなかったわけですが、ピンボールと井戸のメタファーとして丸いアクセサリーで揃えるかたがいたり、素敵なジャケットの下にsave humans,save catsのTシャツ(春樹先生デザインのチャリティTシャツですね)を着ているかたがいたりと、知識とユーモアとセンスを兼ね備えたクオリティの高い装いのかたばかりで、拝見していて楽しかったです。

ちなみに、白いシルクのワンピースを着て「ミシシッピ」のスペルに想いを巡らせるようなかたはいなかったと書きましたが、「あなた、本当は結婚したいんじゃないの?」というカンペ(?)を書いて持参して来たかたはいらっしゃったことを申し添えておきます。

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◆お役目について
結婚式のお役目、具体的には①受付と②友人代表スピーチも主義者のかたたちにお願いしました。
まず①受付ですが、お願いしたLINEにこの返答↓ す、すごい…

トラブルなく式を開催できたのはお二人のご尽力あってのものです。ありがとうございました!
続いて②友人代表スピーチは我らがBook Clubのボスに依頼。何かしらのかたちで作品にはふれてくるかな…と予想していましたが、なんとガッツリ『スプートニクの恋人』から引用してくださいました。
「わたしにはそのときに理解できたの。わたしたちは素敵な旅の連れであったけれど、結局はそれぞれの軌道を描く孤独な金属の塊に過ぎなかったんだって。遠くから見ると、それは流星のように美しく見える。でも実際のわたしたちは、ひとりずつそこに閉じこめられたまま、どこに行くこともできない囚人のようなものに過ぎない。ふたつの衛星の軌道がたまたまかさなりあうとき、わたしたちはこうして顔を合わせる。あるいは心を触れ合わせることもできるかもしれない。でもそれは束の間のこと。次の瞬間にはわたしたちはまた絶対の孤独の中にいる。いつか燃え尽きてゼロになってしまうまでね」(p.179 l.2-8)
わたしは全ての春樹先生の文章の中で1位2位を争うレベルでこの文章が好きです。したがって大歓喜だったわけですが、同時に「結婚式で絶対の孤独について語るのはどうなんだ?」と思い至り、隣にいるパートナーやその親族のみなさまの表情をビクビクしながら窺っていました(結果的にみなさまとても喜んでいらっしゃいましたが)。
もちろんこの引用で終わるのではなく、我々夫婦のことを軌道がかさなった”旅の連れ”になぞらえ、この先の人生という旅路が美しく続くことを祈念してくださいました。文学を愛する人間の言葉というのは本当に心に響くものがありますね。ありがとうございました!

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◆会場内アイテムについて
ここからは我々主催側の準備について。一流の主義者のみなさまをお招きしましたからね。主催側も一流のおもてなしをしなければなりません。
本当はプロフィールムービー(新郎新婦の生い立ちとかをまとめた動画)に「あなたのことを10分間話して」とかやろうと思っていたのですが、動画内に作品の引用を盛り込むのは著作権の観点でグレーであるという話が浮上したのでボツに。
代わりに、会場内のアイテムである席札の裏に手書きのメッセージを用意しました。

こちら、以下の制約があり思った以上に文章のチョイスが大変でした。
1)短文であること…メッセージを書けるスペースが5×5㎝程度と大きくなかったので、その人に向けたメッセージも書くことを考えると引用は1〜2文が限度でした。
2)お祝いの場に適した内容であること…急にパートナーが失踪するとか、人妻のガール・フレンドが出てくるとかはNGとしました(そりゃそうだ)。孤独や喪失感を描くことが多い作家さんだけに、お祝いの場で使える文章はかなり少なかった印象です。
3)各ゲストのイメージに合った文章であること…一番好きな春樹作品がハッキリと決まっているかたについてはなるべくその中からチョイスしました。それ以外にもそのかたのライフスタイルや趣味につながるものを選んだり(ペット、スポーツ、音楽など)、生き様やお名前の漢字を考慮に入れたりしてみました。
4)各ゲストの出典が重複しないこと…これは選んでいくうちに自然とできてきた制約ですが、せっかくなので引用元は被らないようにしました。
結婚式というのは自分の今までの人生を振り返る機会でもあると思いましたので、わたしの手元にある春樹作品を長編・短編・エッセイ等すべてざっと読み返しながら探していきました。「準備と称してこいつ遊んでいるんじゃなかろうな」というパートナーの視線に耐えながらページを繰るのはなかなか辛かったです。
アイテムまわりでもう1つ、ささやかなお楽しみとして会場内に星型の模様がついた羊を紛れ込ませておきました。事前にみなさまには「お暇だったら探してみてね」と通達しておきましたが、無事見つかったようです。

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◆主催側スピーチについて
最後にスピーチについて。事前に以下3パターンを考えていて、当日の雰囲気でどれかにしようと思っていました。
1)「100パーセントの女の子」に絡めて、運命の出会いについて語る
2)『海辺のカフカ』に絡めて、男男と男女と女女について語る
3)『村上春樹雑文集』より春樹先生の結婚祝いの言葉に絡めて、結婚はいい時にはとてもいいものであるということについて語る
ところがですね、Futako Book Clubのみなさまはこの式の前日に『アンナ・カレーリナ』の読書会をしてこられているとのことでして。世紀の不倫小説をキメて結婚式に参列するその心境やいかにというのはさておき、せっかくなのでそれに絡められないかなと思いぶっつけ本番でパターン4を脳内に生成しました。
4)『アンナ・カレーリナ』に絡めて、自身の結婚観について語る ←採用
割と雰囲気で話しましたが、おおよそ以下の内容だったはずです。
・「幸福な家庭の形は1つだが、不幸な家庭の形はそれぞれ」というのは19世紀ロシア文学作家トルストイの言葉である
・令和の日本においては幸福な家庭の形もそれぞれであり、結婚の有無はその際たる例であると思う。結婚してもしなくても今の時代幸せになれるというのが個人的な意見だ
・しかし、パートナーと出会うことでその考え方が少し変わった。(結婚=幸せとは思わないが)この人と結婚したら幸せだろうと思えた
・「人は自分自身の欠けた一部を探して恋をする」というのは村上春樹『海辺のカフカ』の言葉だが、こんなに自分の一部のような、心を全開にして付き合えるような人と出会えるとは思わなかった
・こんな素敵なパートナーを育ててくださったパートナーのご家族のみなさまやご友人のみなさまと、その隣に立てるわたしを育ててくれたわたしの家族や友人に感謝したい
ゲストのみなさまにどのように聞こえていたかはわかりかねますが、「スピーチよかったよ」とお声かけいただくこともあったので及第点かなと思います!
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以上です!
来てくださったゲストのみなさま、改めて本当にありがとうございました!
今後結婚式を挙げる主義者のみなさま、一例として参考にしていただいても差し支えないですが、その後の夫婦の関係性については一切の責任を負いかねますので悪しからず(笑)